スタート!そして…

ファンファーレとともに手をたたき、
風邪ひいた身体も今ではすっかり息をひそめ(ぇ?
2人の興奮も最高潮に達する。
そしてゲートが開き、
18頭の馬達が緑のターフの上を駆ける。
ペースはスロー。
さて、このレースの主役、ダンスインザムード
いったいどのあたりで先頭に立つのか??
最終コーナーを回り、
府中の長い長い直線に突入!!
ダンスは?ダンスは??ダンスは???
誰もがそう思ったであろう。
いつになっても前に出てこない。
武豊とダンスはどうした??
ゴール板まであと200m。
ちょうど目の前を馬たちが風のように走り去る。
先頭の馬も引き離していく…
ついに、ダンスはこなかった。
「ダンスが!!あぁ…」
日本中の誰もがそう思ったと思う。
僕自身も、あんな予想だにしない展開に
ただただ唖然とするばかりだった。


「あっ!」
そういえば、僕はダンスを外した馬券があった。
おそるおそる見てみると…


あっ!!当たってるぅぅぅ!!!!


し、しかも、
複勝でセコく買ったのじゃない。
馬連で買ったやつだ!!!
今日はダンスがらみの馬券に人気が集中していたから、
それを外した馬券はそこそこ人気同士でも高くつくはずだ!
新聞の予想オッズを見てみると…


「きゅ、90倍!?」


いや、実際は違った…いい意味で。
結果がターフビジョンに表示された。



「い、いちまんとんではちじゅうえん!?!?!?」



どうやら10080円らしい。
本当に驚いた。
この手元の紙が1万円!?
隣の友人も「うそだろ?」的な目で
僕の手元の馬券を凝視。
「ま、間違いない!!」
まわりの溜息が聞こえる中、
小走り気味に払い戻しに向かう。
そして、馬券を機械にぶちこむと、
福沢諭吉先生がひょっこり顔を出し、
宇治の平等院が8個も落ちてくる。
この瞬間、僕は夢心地だった…
そんな光景を目の当たりにした友人も
「ちくしょー俺も!!」
とばかりに最終レースの予想をし馬券を購入。
僕も一応買ったが、
もはや本気で予想する気もなかった。


結局、友人も僕も最終レースは外し、
笑顔の男と落胆の男が
東京競馬場を後にした。